外気温実験 :外気温が低い環境では温めたラッピングシートが、どのくらいで硬くなってしまうのか?
👉 温めたラッピングシートは、数十秒で外気温と同じ温度に戻ります。
👉 外気温が低い環境では、当店のシート施工は 推奨できません。
実測データの話です。
🔥 なぜこの実験をしたのか?
「ヒートガンで温めれば柔らかくなるから外気温が多少低くても大丈夫」
と思われているかもしれませんが…
⚠
・すぐ硬くなる
・粘着が弱い
・冬の屋外だと失敗率が高い
👉 これは、素材と外気温の物理の問題です。
🧪 実験内容
🧱 使用素材
・当店取扱いラッピングシート
・厚み:約0.2mm
🧰 方法
・ヒートガンで 約90〜100℃まで加熱
・レーザー温度計で 0〜45秒まで温度を測定
・同条件で 3回測定
📉 実験結果

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経過時間 |
表面温度 |
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加熱直後 |
約93〜97℃ |
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5秒後 |
約50〜60℃ |
|
45秒後 |
ほぼ外気温 |
🧠 つまり…
👉 温めて“柔らかくなった状態”は
👉 たった数十秒しか続かない
❄ なぜこんなに早く冷める?
📌 理由はラッピングシートは約0.2mmの極薄構造だからです。
🧊 熱を蓄えられない
🧊 すぐ外気温に引きずられる
🧊 だからすぐ硬くなる
これは素材の性質そのものです。
🚫 低温施工が難しくなる“本当の理由”は2つある
ここ、今回いちばん伝えたい核心です。
低温環境では、問題が 1個じゃなくて2個同時に来ます。
① 粘着が乗りにくくなる(温度依存)
粘着剤は低温だと硬くなりやしため、粘着力がおちる状態になりがちです。
(この点は、別記事「温度と弱粘着の科学」で詳しく扱います)
✅ ここで重要な補足
たとえ低温でシートが「手で触ると少し柔らかい」と感じても、粘着が落ちていることがあります。
つまり、“材料が曲がる”と“貼って定着する”は別問題です。
低温下では、押し当てても決まりづらく、時間が経つと端が戻る/浮く、といった失敗につながりやすくなります。
② シート基材(PVC)そのものが硬くなる=伸びにくく、裂けやすくなる
冬の屋外で起きる“もう一つ”の問題がこれです。
- 施工面も冷たい
- 外気も冷たい
- 温めてもすぐ冷める
→ 柔らかい状態でテンションをかけ続けられない
するとどうなるか?
- 谷・山の追従がしにくい。
- 折り返しが戻る(応力が強くなる)
- 無理に引っ張ると 裂けのリスクが上がる
✅ ここで、さらに重要な補足
低温でも「可塑剤が入っているから、多少はクニャっと曲がる」ことがあります。
ただしそれは “触ると曲がる”レベルの柔らかさであって、施工で必要な柔らかさとは別物です。
施工では、
- 曲面・谷・山に追従させる
- 折り返し部を密着させて固定する
- シワを消すためにテンションをかけて伸長させる
といった動作が入ります。
このとき、温め不足(=低温のまま)だと、基材が十分に柔軟化していないため、
👉 伸びないのに引っ張る状態になり、最悪、裂けが起きやすくなります。
つまり低温環境では、
「粘着が弱い」+「基材が施工に必要な柔らかさに届いていない」
ということが同時に起きます。
※注:PVCと温度(硬さ)の関係について
PVC(塩化ビニール)系材料は、温度によって粘弾性(硬さ/柔らかさ)が変わります。
DMA(動的粘弾性測定)の例では、温度変化に伴い Storage Modulus(剛性=硬さ指標)が大きく変化することが示されています。
詳しい説明は補足説明に記載します。
本記事では「低温側ほど硬くなりやすい」一般的な性質の根拠として、この測定例グラフを引用しています(※当店シートの配合を特定するものではありません)。
「PVCの温度依存(Storage Modulus と tanδ)」
出典:TA Instruments “Characterization of PVC by DMA”(TS40)
🌡 当店の推奨施工環境
当店の基準は以下です。
✅ 室温15℃以上
✅ 風の影響を受けない
✅ ガレージ・室内推奨
❌ 冬の屋外施工は推奨しません
✅ それでも冬にやるなら(失敗率を下げる現実的な工夫)
「やるなと言われても、やるしかない日」もあると思います。
その場合は、“外気温を変えられないなら、局所環境を変える”が基本です。
- 施工場所を室内/ガレージに寄せる(風を切るだけで変わります)
- 貼る面(ボディ/パネル)側も温める(シートだけ温めても、面が冷たいと戻ります)
- 小さい面積で区切って貼る(柔らかい時間が短い前提で進める)
- 温め→貼る→決める の時間を短くする(“数十秒で戻る”前提で段取りを組む)
※安全のため、加熱時は火傷・塗装面への過加熱に注意し、温度管理と換気を行ってください。
🏁 まとめ(事実)
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事実 |
内容 |
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🔥 |
温めても数十秒で冷める |
|
🧊 |
薄いから熱を保てない |
|
⚠ |
低温は「粘着低下」+「基材の柔軟性不足」が同時に起きる |
|
✅ |
15℃以上・風なし環境が安定 |
■補足説明

このグラフは、一般的なPVC(塩化ビニール)の温度による“硬さ(剛性)”の変化を、DMA(動的粘弾性測定)で評価した例です。
グラフは上下2段で、それぞれ意味が異なります。
【上段:硬さ(剛性)の指標】
- 縦軸の Storage Modulus(貯蔵弾性率) は、ざっくり言うと「硬さ(剛性)の指標」です。
- 数値が大きいほど硬く、小さいほど柔らかい状態を示します。
- 温度が下がるほど(低温側ほど)値が高くなりやすく、PVCは硬くなりやすい、という傾向が読み取れます。
【下段:性質が切り替わる“目安”】
- 縦軸の tanδ(タンデルタ) は、材料の粘弾性挙動の変化を捉える指標で、ピーク付近が“状態変化(転移)”の目安として扱われます。
- この記事では「硬さの変化」を主に説明したいので、実務上は 上段(Storage Modulus)を中心に見ればOKです。
【緑・青・赤の違い(可塑剤の影響)】
緑/青/赤の線は、可塑剤(柔らかさを出す添加剤)の量が異なる配合例を示しています。
一般に、
- 可塑剤が多い配合ほど、低温でも剛性が上がりにくく(=相対的に柔らかさを保ちやすく)
- 可塑剤が少ない配合ほど、低温だけでなく常温域でも硬さが残りやすい
という傾向になります。
※なお、このグラフはPVC配合例のデータであり、当店ラッピングシートの配合を特定するものではありません。本記事では「低温ほどPVC系材料は硬くなりやすい」という一般的な性質の根拠として引用しています。
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